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徒歩一時間の旅行(二期・大瀧瑞穂)

知らないことを知るのが好きだ。旅行先で自分の知らない世界に踏み込んだときが一番わくわくする。それは見慣れない建物であったり、耳慣れない言語であったり、食べ物や匂いなど様々である。特に海外旅行は如実に私にとっての新世界を感じさせられる。しかし知らない世界というのは山や海を越えずとも、案外身近にあるものかもしれない。

 帰省したとき久しぶりに妹と公園に行ってくれないかと母から頼まれた。知的障がいのある妹は昔からブランコが好きで、いつも決まったルートから公園へ行く。けれどその日のルートはかなり遠回りで私の踏み入れたことのない道ばかりだった。初詣でしか来たことのなかった神社は青々と茂ってセミがわんわん鳴いている。立葵の咲き並ぶ砂利道も怪しげな中華料理屋も、同じ町にあったのに私の気づかなかった世界だった。妹はガイドのように未知なる世界へ私を導いていく。

結局公園に着くのにいつものルートより倍以上の時間がかかったが、それは私にとって大きな発見のある旅であった。