怒り

 9月3日の0:30am。寮内のRed Squareと呼ばれる集合場所に"Maroon and Gold..."とお馴染みのフレーズが響き渡る。Rexans(Rexに住む一員)になるための最終試験が始まるのだ。Hall ChairpersonであるDuke Duchess Lady Vocal(本名不明)の指示を静かに待つ一年生。緊張感漂う中、Lady Vocalの重い口が開く。「今日の内容は秘密だ。行って確かめろ。」

 階段ダッシュ、ほふく前進、誓約暗唱...何のためにやっているのか分からないテストが続く。正直言ってRexansなんかどうでもいいよ、とイライラしていると次の試験が始まった。「Brave station。ここでは君たちの勇気を見たい。あのバケツに十秒間手を突っ込め。」夜中で真っ暗な上に、電灯の当たらないところに置いてあるので、何が入っているのか全く見えない。順番が回ってきて手を入れるとドロッとした感触が...。

 女学生のえずく声で我に返る。手からは異臭がしていた。しかも全ての試験が終わるまで洗ってはいけないという。「これ何ですか」そう聞くと「Rex Lotionだ。フレッシュな匂いがするだろ?」とふざけた返事が返ってきたので「今日を最後にこういう行事は二度と参加しません。」と言い返した。

 聞けばこのしきたり、ジャマイカの文化でも何でもなく寮の文化だった。Taylor Hall, Chancellor Hallという、ここよりもはるかに過酷な寮を除いて、ここまでのオリエンテーションは行われていなかった。寮に関する情報が乏しかったのも、ジャマイカへの交換留学第一号だったからなのかもしれない。

 4:30am。全ての試験が終わる。これまでずっと睡眠不足だったので今すぐにでも眠りたい。洗剤で何度も手を洗った後、ベッドで横になった。明日から授業が始まるが何の準備もできていない。 【大野友暉】