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ひとり旅(二期・片山あすか)

三重県伊勢市へ。前日の夜にふと思いついて、次の日の朝には電車に乗っていた。初めてのひとり旅だった。ひとりで行動できる自由さもある反面、寂しさと不安を感じながら9時間電車に揺られる。車窓からの風景を眺めたり、本を読んだり、考えごとをしたりしているうちに9時間が過ぎた。

ドミトリーに泊まって安く済ませようと、9時間の長旅の中で決めてドミトリー付きのゲストハウスを予約した。ゲストハウスに着くとまずドミトリーに案内される。知らない人と2段ベッドで寝る経験はもちろん初めてだった。カーテンで仕切られてるとはいえ、不安が募る。個室にすればよかったと少し後悔もした。

共同のリビングルームに降りると、わたし以外のドミトリーの宿泊者-全員ひとり旅の女性4人が集まっていた。これから近くの居酒屋にみんなで行くという。他の4人が何者かも知らない不安もあったものの、それよりも好奇心が勝り、わたしも一緒に飲みに行くことにした。

1年間日本でのワーホリを終えた中国人、大学院を卒業したばかりの韓国人、先日離婚したばかりで傷心旅行をしている女性、保育士の女性、そしてわたし。

自己紹介もそこそこに、恋愛話から愚痴までさまざまな話に花を咲かせる。そして途切れることなく次々と話が溢れる。わたし自身も初めて会ったとは思えないぐらいに多くを話したし、多くの話を聞いた。

気づくと時間はあっという間に過ぎてしまっていた。居酒屋から帰り、「じゃあ、また。」そう言ってゲストハウスのそれぞれのベッドに戻るとき、なんだか寂しい気持ちになった。

ゲストハウスを一歩出れば、もう会うことはない。今も、それぞれがそれぞれの生活を送っている。“ひとり”ぼっちが集まったあたたかいあの時間が、初めてのひとり旅の中で忘れられないひとときになった。

日常から少し離れて、ひとりで遠くへ行くことで出会えるあたらしい人々。忙しい毎日とは別に、たまには時間を贅沢に、偶然の出会いを楽しむ旅もいいかも、と思えた。