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現代のTravel(一期・丹崎萌華)

 インターネットでオーロラツアーを予約した。飛行機やホテルの手配など全てがパックになっているものだ。かねてより自分の目でオーロラを見てみたいと思っていたため、鑑賞回数が最大限多くなるような旅程を選んだ。そのため、他都市への訪問やオプショナルツアーなどは一切組み込まれていない。

 旅行プランを検索している最中、「海外ツアー」や「JBトラベル」といった語が目に入った。日本語の「旅行」という意味を様々なカタカナ(英語)で表現している点がふと気になったからだ。そこで「tour」と「travel」を調べてみると、「tour」は周遊旅行、「travel」は主に長距離の旅行を意味すると出てきた。また、「travel」には「骨折り、労苦」といった意味の言葉が語源になったという話も出てきた。

 この語源をみて、大学の授業がよみがえった。ブーアスティンという学者の意見では、本物の旅行とはtravelの語源にもあるように能動的・生産的・労苦を伴う経験で、パック旅行などの観光は受動的・消費的・価格付きの商品のため偽物である、というものだ。これを踏まえると、今回のオーロラ旅行は偽物なのだろうか。

たしかに、旅行代理店が提供しているプランに沿って旅をしに行く。その点ではまったくもってブーアスティンのいう本物の旅行ではないだろう。しかし今の時代、インターネットやテレビなどで簡単にオーロラの写真や映像が見られる。現地へ行かなくとも目にすることができるものを、あえて足を運んで見に行くことは労苦を伴う行為ではないだろうか。加えて、オーロラは気象条件が揃わないと鑑賞できないため、遠路はるばる出掛けても見られない可能性もある。これまたさらに骨折りな旅になりうるのだ。

このように考えると、オーロラ旅行を偽物とは言い切れないのではないか。また、オーロラ以外にもウユニ塩湖や竹田城などの既にあるフォトジェニックを求める旅も同様だろう。もちろん他の類の旅も偽物ではないはずで、それについては違う角度からブーアスティンへの批判が様々ある。ただ今回は、技術の発展によって現地へ赴かなくとも見られるものを、あえて見に行く旅行のことを、現代のTravelと言えるのだと思う。

見える保障はない。だけれども他の目的も持たない。ただオーロラが鑑賞できる可能性にかけて、私は明日からオーロラツアーならぬ「オーロラTravel」に出掛ける。