黒い神①

 子なる神、イエス・キリスト。キリスト教の預言者にして三位一体の一つ。プロテスタントが人口の6割を超えるジャマイカでは、主流の宗教だ。でも、キリスト教ってヨーロッパありきなイメージがある。絵画に描かれるのは白人ばかりだし、この国にも西洋からの「統治」という形で伝わった。黒人のための、「黒人の神様」はいるのだろうか。

 11月1日。バスに揺られること6時間。モンテゴ・ベイのはずれ、ナイヤビンギと呼ばれるラスタファーライの集会を訪れた。まず最初に、UWIの学生ということで暖かい歓迎をしてもらえたのは意外だった。というのもラスタたち(ラスタファーライ運動に参加する人)は西洋世界ないし、地位や権力を振りかざすものを「バビロン」として敵視している。日本人の生きる資本社会もその一部だ。少々身構えていただけに、拍子抜けだった。

 夜、日付が変わるころ、ラスタたちが集まりだす。膝まで届くドレッドヘアーと伸びきったような長いヒゲ。そんな彼らの目はどこかうつろだ。漂うのは、甘ったるくて草の焼けたようなにおい。煙がライトに照らされて、鈍く、光った。――大麻だ。大麻を吸っている。(続く 【大野友暉】