算数は苦手(二期・染谷祐希)

 小さい頃から計算が苦手だった。小学生以来、算数や数学で高得点を取ったためしがない。それは今でも変わらないし、僕がそんな科目から逃げるかのように文系の道に進んだのも、同じ英語学科や交流文化に所属しているみなさんなら、きっとわかってくれるはずだ。それなのに、やっとの思いで算数の呪縛から逃れてきたというのに、僕が好きな、旅には計算がついてまわる。

 「次の長期休みにはあそこに行こう。」毎月少しずつお金を貯める(足し算)。事前に予約したホテルも、何人かで行くときには均等に割り勘にしなきゃならない(割り算)。オーストラリアは1ドル=85円だから、この可愛い234ドルのパーカーは日本円にして………(掛け算)。旅行から帰ってきた時には財布も貯金もすっからかんだ(引き算)。

 お金のだけではない。重さや距離の単位が異なるときも、目的地に辿り着くまでの時間を考えるときにも計算しないといけない。あー頭がパンクしそうだ。

 でも、そんな僕でもわかる。旅は足し算だ。

素晴らしい景色を目の当たりにして息を吞む。遠い昔に創られた街を歩いていると、いつしかタイムスリップしてしまったと勘違いをする。時には、しんしんと雪が舞い降りる山の奥で1時間に1本しかないバスを逃がしてしまうこともある。旅の行く先々では素敵な人々の出会いも待っている。旅をすればするほど忘れられない思い出は増えていく一方だ。

 旅を通して、写真でしか見たことがなっかた場所が、いつしか僕にとって大事な場所になる。心の距離は縮まっていくばかりだ。ん、これはひょっとしたら旅は引き算なのかもしれない。何のことだかさっぱりわからないって?それじゃあみんなに証明してあげよう。

窓辺に座る彼(三人称)と目が合う。「こんにちは!」と声をかけ隣に座る。てっきり日本人だと思っていたが違うらしい。「君(二人称)はどこから来たんだい?」話は弾み時間はあっという間に過ぎていく。悲しいけれどお別れの時だ。さよならを告げてそれぞれの目的地に向かう。それでも今でも頻繁に連絡を取り合う、僕(一人称)の大切な友達だ。

 ほらね。

こうして色んな経験をして心の距離が短くなった時いつも思うことがある。「あ~なんていいところなんだろう。」

新しく好きな場所リストに追加しなきっっっ………!?あれ!?これって足し算じゃないか!!

 やっぱり算数は苦手だ。