番外編:キューバ・ハバナ

 古びた町並みには、クラシックカーがよく似合う。壁に描かれた英雄は、革命の面影を感じさせる。住んだこともないのに、どこか郷愁を覚えながら、僕は前期の授業を思い出していた。文化人類学の基礎クラス、カリブ人のアイデンティティを探る課題で、「地理的にはカリブでも、今のキューバはカリブの一員とは言えない」というクラスメイトの意見だ。

 フィデル・カストロ、チェ・ゲバラ。「社会主義国・キューバ」を作った2人のカリスマ。特にチェ(そう呼ぶのが適切らしい)はアルゼンチン出身で医者でもある。革命を起こすその時まで、キューバに足を踏み入れたことすらなかったのだから驚きだ。「革命博物館」で彼らの生い立ちと、他のカリブ諸国とは違う道を歩んだ、キューバ革命後の歴史を垣間見た。

 文豪ヘミングウェイの通ったバーへ向かう。フロリディータのフローズン・ダイキリは、ひんやり爽やかで暑い日差しにピッタリ。ボデギータのモヒートは、ラム酒と砂糖にミントの大胆な香り。彼の愛した2つのカクテルは飛ぶように売れていく。観光客でごった返す店内に、ただただ空のグラスが乱雑に居座っている。キューバは思いのほか、観光地化しているようだった。

 思い描いていた社会主義国でないことに、物足りなさを感じつつ、僕は夜のハバナへと繰り出した。仲良くなったキューバ人とラム酒をひっさげ、道を歩く。彼に友人を紹介され、踊る流れになった。ジャマイカ歴4ヵ月。ダンスは技量よりも勢いが重要だと心得ている。酔いも味方し、激しく踊る。しかし、ラム酒に運動は禁物だった。一気に酔いが回り、吐いてしまう。楽しくて調子に乗ってしまった。この日は大晦日。多くの友人に笑われながら、キューバで新年を迎えた。思い出に残る良い年越しだった。 【大野友暉】