番外編:ポルトガル・リスボン

 坂、坂、坂。まだまだ寒い時期だというのに、息は切れ、汗が出ていた。「七つの丘の街」と呼ばれるリスボンは、坂が多くて移動が大変だ。そこで頼りになるのがポルトガル名物「路面電車(トラム)」である。街に張りめぐらされた電線が、市民の足とも観光資源ともなるトラムを導いている。

 勝利のアーチをくぐって地中海へ向かうと、多くの人が気持ちよさそうに日向ぼっこしていた。ささやかな波の音を聞きながら、さらに海辺を西に歩く。体をやんわり包む日差しと、ひんやり透き通った潮風で、時はゆったりと流れ、カモメの鳴き声が空でこだました。

 町の風景もさることながら、ポルトガルは料理が素晴らしいことでも有名。今回はグルメ旅行が目的だ。

【バカリャウ・アサード】バカリャウとは塩漬けにした干し鱈のこと。あっさり塩味とグリルの芳しい香り。口の中で身がホロホロ崩れると、鱈の旨味がグンと来て、最後まで塩味が走り抜けていく。気づいた頃には、皿に並んだポテトを口に運んでいて、目はまたバカリャウへと向いていた。バカリャウ、バカ美味い。

【パステル・デ・ナタ】日本でいうエッグタルト。熱々とろとろの半熟カスタードが、垂れてこぼれるのを追いかけて一口。くどくないクリーミーな甘みが、サクッと焼きあげられたパイ生地と相まって美味しい。エスプレッソとの相性もバッチリだ。

【ボルゲル・デ・クランゲージョ】カニ天ぷらバーガー。メニューに"TEMPURA"とはっきり書かれている。日本の天ぷらとは異なり、サクッというよりザクッという感じ。バンズに負けないしっかりとした食感が、バーガーとしての絶妙なバランスを保っている。チップスも食べて口の油分がいっぱいになったら、喉を大きくあけ、ビールをググッと流し込む。冷えたビールと炭酸の刺激が、油を流し、爽やかな苦みだけを残す。最高。僕はこのために生きている。

 

美味しいものを食べる。ただそれだけのことが、何よりも大好きだ。正直ずっとここにいたい。 【大野友暉】