帰国

 1月20日。帰国。ジャマイカに「帰国」。なんとも不思議な響きだ。思えば、こんなに長期間に渡って日本を離れたのは初めてだった。けれども、ジャマイカに「故郷」のような気持ちは未だ感じられない。心は日本にあって、それなのにここへ「帰国」。浮つかない感じがして、なんだか少し引っかかる。

 ノーマン・マンレー空港を出たのは午前4時。地平線に隠れた太陽は、より一層、夜を深くしていた。タクシーに4000JMDも支払って大学へ。道のりはでこぼこで、ドライバーからは大麻の香り。旅行の平和ボケが一気に引いていく。この国は相変わらず物騒だ。

 寮のセキュリティ・ゲートで慌ててIDを探し出す。「君のこと知ってるよ」と看守に言われ、顔パスされた。なんだ、ちょっと嬉しいじゃないか。肩を少し張って、オラつきながら帰宅。扉を開けると、擦れた音とともに、死んだゴキブリが引きずられていた。

 死んでいたのでまだ嬉しい、まだ幸せ。そう思いながら、増えたクモの巣も掃除する。ヘトヘトの身体には冷水しか出ないシャワー。頭が冷えて、前期の生活をしっかりと思い出した。よし。帰ってきたぞ、ジャマイカに! 【大野友暉】