アニメーション

 眉間に寄ったタテのシワ。今日も教授は、激を飛ばす。

 毎週金曜、13:00~16:00。せっかくなら日本で受けない講義を、との思いからアニメーションの授業を取ることにした。このコースでは、アニメの描き方ではなく「制作手法」を習っていく。

 アニメは通常、1秒24コマで描かれる。これは言い換えると、24枚の絵を描いて、初めて1秒の映像ができるということだ。1分で1440枚。とんでもない世界である。しかし実際は、1枚1枚すべての絵を描くような無謀なことはしない。

 どういうことか。例えば、バイクが道をまっすぐに走るシーンを、後ろから観ていると想像してほしい(レースゲームのような視点)。道の脇の木やビルが、奥から手前に流れてくると、僕たちの目にはバイクが「進んでいる」ように見える。このとき、キャラクター(バイク)は画角に固定してもかまわない。相対的に、背景だけを動かしてキャラクターを移動させるのだ。そう考えれば、描く部分は背景だけで済むのである。

 アニメの世界では、背景やキャラクター、キャラクターの中でも目や口といったように、いくつもの層(レイヤー)を別々に描いて、後で合わせること(オーバーレイという)をする。描くべきところと、そうでないところを分けて、アニメーターの労力を減らしていくのだ。

 "Do Think, Do Prepare, Do Something (考えろ、準備しろ、行動しろ)" 教授は口癖のように、その言葉を連発する。アニメ業界では、この他の様々な工夫をもってしても、続けていくのが難しい。かの有名なウォルト・ディズニーでさえ、7回も破産している。教授はその厳しさを教え、常に全力で取り組むことを要求する。

 アニメーション。今まで受けてきた中で、最も不思議で、情熱的な講義だった。 【大野友暉】