グレーゾーン

 泥と排気ガスと土埃。思っていたよりも汚い街だな。カルガリーに来てから早くも3週間が経ち、たまにはちゃんと勉強をしようと図書館に向かう道中、そんなことを思いながら歩みを進める。

 やっと図書館が見えてきた。15分くらいしか歩いていないはずなのに体はキンキンに冷えている。さあ、一刻も早く屋内へ。と、思ったのも束の間、目の前に広がる異様な光景に思わず足が止まった。煙草だ。一体何人の人が、何日かけて、何本吸えばこんなことになるのだろう。小さな小さなパブの前に無数の煙草が打ち捨てられていた。

 カナダではレストランやパブの中で喫煙することは禁じられている。そのため喫煙者は一度店の外に出てからタバコに火をつけなければならない。真冬には-30度にもなるというこの極寒の地で、わざわざ席を外してまで吸いに行く神経は禁煙者の僕には到底理解できないが、服に臭いはつかないし受動喫煙もしないので禁煙者にとってはありがたいルールだ。

 日本でも東京オリンピックに向けて僅かながらではあるが飲食店での喫煙の規制に向けた動きが見られる。僕は屋内での完全禁煙を熱烈に望んていたが、それはそれで問題なのかもしれない。灰皿のない屋外で吸う人や歩きたばこをする人が今よりもさらに増えるだろう。

 快適に過ごすための規制が街を汚す。それでは本末転倒ではないか。煙草を吸うなら中か外か。どちらをとっても問題点は多い。一筋縄では解決できない。

 灰色の世界が広がるカナダでは7月からマリファナが合法化されるという。これからこの国は何色に染まっていくのだろうか。

 明日こそ勉強しよう。何色に染まるか白黒はっきりつけられない染谷君は、今日もまたそう思いながら気づけば家へと向かう泥まみれのバスに乗っていたのだった。  【染谷祐希】

(眼下に広がる煙草畑。写真では伝わりずらいのが残念だ。)