夢破れて①

 今日は少し違う話をします。

 4月25日。僕はその時学校へと向かうバスに乗っていた。普段と何ら変わらない朝。強いて言えばいつもより少し遅れて家を出たのだが、それでも学校には余裕で着くはずだった。

 バスの中で携帯をいじっていると母から一通のLINEが届いた。「達也のニュース見た?」と。我が家で達也と言えばTOKIOの山口達也のことを指す。どうしたのだろう。また自転車で転倒して顔でも怪我したのか。それともまた伝説の魚でも釣り上げたのだろうか。そんなことを思いながら親指を右にスワイプし、その指でLINEのニュースを開く。その瞬間全てが止まった。指が動かない。何も聞こえない。息ができない。比喩でもなんでもなく本当に世界が一時停止したのだ。ただ目だけはしっかりと働いていた。これでもかというくらいピンポイントで1つのニュースを照らし出す。他の記事はまるで見ることができない。そのニュースだけが浮かび上がってくるのだ。

 無意識に指が動き出して携帯を閉じる。目も閉じて一呼吸置いてから再び画面をつける。そして重い瞼をゆっくりゆっくり開く。まるでそうすればこの悪夢が消えてなくなるかのように。しかし、悲しいかな。そんな願いもはかなくそこにははっきりとこう書かれていた。「TOKIO 山口達也 強制わいせつ」と。

 はっきりと言ったが実のところ本当にその通り書かれていたのかと聞かれたら困ってしまう。とにかくこの3ワードの持つ破壊力に僕のガラスのハートはぶん殴られてしまったのだ。

 その日はとことん落ち込んだ。学校には授業が始まってから到着し、クラスではミスを連発した。お昼ご飯も無理矢理流し込んでなんとか完食する有り様だ。せっかくの放課後デートも上の空だった。

 TOKIOは僕のバイブルだ。尊敬する人は誰かと問われれば必ず彼らの名前を挙げる。歌はもちろんのこと、その人間性に惹かれていたのだった。口を開けばTOKIOが~。TOKIOは~。どんな話題でも彼らにつなげられる自信がある。2期生ならその姿を想像することは難しいことではないだろう。僕の知識・人格の70%くらいは彼らによって形成されていると言っても過言ではない。素直でよく笑い、それぞれの特技やキャラクターをよく理解し、メンバー同士の仕事は息ぴったりだ。各々、個人での活動も精力的に行う。そんな彼らはチームとして、社会人として、そして1人の男として、僕にとっての道標なのだ。

 グループ、個々共に仕事も増え、彼らのキャリアでも絶頂とも言えるこの時期に、その事件は余りにも突然起こったのだった。(続く)【染谷祐希】