HAPPY CANADIAN DAY②

 そんなカナダだが時より残念なニュースを耳にすることもある。最近話題になったのが、ある白人女性が勤務先に解雇されたというニュースだ。というのも、その女性がレストランで移民に対して差別的発言をしている様子がFacebookで瞬く間に拡散されたのだ。

 また、身近なところでも似たようなことが起きた。学校の友達が100ドル札を手に、ショッピングセンター内の飲食店で両替をお願いしたところ、「カナダ人かアメリカ人にしかできない」と拒否されてしまったのだ。

 ショッキングな事件が立て続けに起こり、少しこの国に幻滅した心境で迎えたカナダ建国の日だったが、幼き頃から植え付けられた感覚はそう簡単には消え去らない。

 「日本でもお祝い事の時は紅白だなぁ」などと国旗を見ながら思っているうちに、気分はすっかり祝福モードに突入。広場で行われていた記念式典のイベントには4年前に世界一の市長に選ばれたという、カナダ史上初のイスラム教徒市長の姿が。彼がカンペも見ずに親しげに話しかける姿と、それを熱心に聞き入る、顔だちも言葉もそれぞれ違う聴衆たちを見ていると、アルコール0にも関わらず、なぜかいよいよ気分がハイになってしまった。頑なにスペイン語で歌い続けるキューバ出身のバンドが奏でる旋律に身を委ね、下手くそなダンスを珍しく皆の前で披露する。151回目の誕生日の締めくくりには、花火を見るにはまだ少し肌寒い夜だったが、打ちあがる大輪の華を前に、僕たちは一緒になって口々に「HAPPY CANADIAN DAY!!」と叫んだのだった。

 そういえば、こっちに来てからまだ4カ月しか経ってないのに、もう誕生日をお祝いするような関係になったのかとふと思う。少しだけ「Canadian」の一員になれた気がした一日だった。【染谷祐希】

(1枚目)カナダではいつでも国旗が掲げられている場所が多い。この写真は家の近くの大学。(2枚目)彼らが1時間以上スペイン語で歌い通したAlex Cubaだ。なかなかおすすめだ。