タゴールの地図
雨雲が人生の通路に漂ってきた、といって戸を閉ざせば己が辿る道の色度も失ってしまうだろう。
私はいまインドの東海岸に位置するコルカタから電車で4時間かけたところにあるシャンティニケトンという僻地に来ている。そんな土地に佇む唯一の大学、タゴール大学に付随する下等学校では一本の桑の木の下で子供たちは勉強をする。
しかし、この学校では雨が降ると授業が出来なくなってしまう。しまいには雨避けのために犬がやってきて、雨が引いた後にはきまって犬の糞と雨で豊潤な教室を残していくという。そんな学校の生徒はタゴールの想いに呼応して先生と自然の声に耳を傾ける。自然の試練に戸を閉ざさず、あらゆる自然の恵みをたずさえて生徒は歩くのである。
あおぞら教室の生徒は医者やエンジニアに限らず己の地図を押し広げていた。彼らの未来図にはアジアで初めてノーベル文学賞を受賞したタゴールの想いで、非常に鮮やかで明るい曇り空が広がっていた。