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読まない地図(二期・富元美佳)

 

 

 紙の地図を読むとき、まずは自分がどこにいるかを探るだろう。方角や周りのものから現在地を見つけ出しそこから目的地までの道順を思い描くなど、地図を「読み」解こうとしていた。
 しかし今私たちは地図を「読む」ことはしない。
紙の地図の代わりとなったグーグルマップはアプリを開くだけで、自分の立ち位置や向いている方角が一目でわかり、行きたい場所を入力すると音声で道を案内してくれる。この新しい地図は読むことを必要としない、「聞く」地図である。
 しかし地図の変化はそれだけではない。観光地にいくとよく手作りのまち歩きマップが無料で配布されている。可愛いイラストやちょっとした説明文が書かれた見た目も楽しい地図である。私たちはその地図を「見る」ことでまちの隅々を知ろうとするのだ。

 

 「見る」地図は読む相手を選ばない。外国からきたお客さんたちも嬉しそうにまち歩きマップを手にまちへ繰り出していった。