私が今、どこにいるのか。それを教えてくれるのは地図だ。最近の地図は現在地を読み取ってくれる。さらには目的地までの方向を矢印で示してくれる。地図は読むものではなくなったのだ。
夏休み、旅行先の韓国で道に迷ってしまった。Wi-Fiが無かったのでガイドブックの地図を見ながら歩いた。しかし、私は紙の地図を読むことが苦手でどう進めばいいかわからず途方に暮れた。
そこで、道を歩いていた若い女性に拙い韓国語で声をかけてみた。すると、彼女は親切に目的地までの道順を説明してくれた。大学で韓国語を勉強していて本当に良かった、と思った瞬間だった。その後も現地の人と会話するのが楽しく、地図は鞄の中にしまっていた。
実は地図より優れものなのは言語なのかもしれない。言語と少しの勇気さえあれば地図なしでも道を開いていくことができる。地図を読むという能力が先進技術により失われかけている今、必要とされるのは言語力なのかもしれない。