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その人(三期・脇沙里亜)

 

みんな、「自分という地図」を持ちながら歩いている。

 

 

 

道行く人の地図を盗み見る。あぁ、やっぱりこの人も個性的で完璧だ。自分の地図のように色あせた部分は見当たらないし、欠けている部分もない。私も周りの人のようにきちんとした地図がほしい。そう思った時から、この分野じゃ無理、と感じれば適当な理由をつけ次々と選択肢を変えてきた。一度でも失敗してしまえば、完璧な地図は完成しない。

 

 

 

憧れの人の地図をじっと見てみる。驚くことに、あんなに綺麗だと思っていた地図は、間近で見てみるとセロハンテープだらけだった。一度ぐしゃぐしゃにしたような跡も、絵の具で色を足している箇所も見つけた。完璧、の意味をはき違えていたことにやっと気づいた。擦り切れれば補強し、色あせれば塗り直すことが重要だったのだ。

 

 

 

ボロボロの地図を持ちながら歩く。完璧じゃなくても諦めたくないものこそが、「自分という地図」を完成させるのかもしれない。