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迷子(二期・清野佳奈)

 

私はよく迷子になる。地図を使いこなすことができたら良いのに、と何度思ったことだろう。就職活動中も地図を片手に歩いていた。頭の中でお決まりの、自己分析をしながら。

 

 “何が私の生きがいなのだろう。”自己分析を続けた。私の答えは、“周りの人に喜んでもらうこと”だった。周りが喜ぶ「地図」の上を歩むことが、私の生きがいなのだ。

 

中学で家庭教師を喜ばせたくて毎日2時まで勉強したのも、高校で先生を喜ばせたくて検定を受け続けたのも、そのためだった。私は、20年以上「地図」を使う、ベテランだった。

 

 大学に入る頃、「地図」が見にくくなった。使い古し過ぎたようだ。迷子になって愛する故郷を離れ、迷子になって“吐血ゼミ”にたどり着いた。正直、苦しかった。でも少しだけ、迷子はワクワクした。

 

地図を使えば、安心だ。けれど、迷子の4年間で私は思いがけない出会いがあり、発見があった。地図を使いこなせない迷子も、悪くないかもしれない。