少しセンチメンタルな気分に襲われた。太陽が地平線に吸い込まれていくにつれ、カルガリーと僕との距離がどんどん離れていく。
9月6日、約6ヶ月過ごしたこの街を後にした。
最新の世界で最も住みやすい都市ランキングでカルガリーは5位に輝いた。確かに住みやすいが、それ以上でもそれ以下でもない。しかも、車なしには生きられない。正直なところ、これが半年間現地で過ごして抱いた印象だった。さらに、学校で出会った友達はもうほとんどいない。そんなこともあり、そんなに後ろ髪を引かれることもないだろうと決めつけていた。
だからこそ、自分が少し淋しいと感じていることに驚いた。元々コンパクトにまとまったダウンタウンのビル群が見る見る小さくなっていく。思えば、大好きな公園もあるし、ビールも美味かった。そして何より、たくさんの思い出が詰まっている。案外良い所だったのかもしれない。
住みやすさランキングは様々な統計データを基に算出されている。もし、ここに心の物差しを反映できれば、カルガリーももう少しランキング上位に食い込むかもしれない。
「行ってきます」と、心の中で呟く。日本語だったけれど、きっとわかってくれただろう。帰ってくる場所がもう一つできた。
こうして僕は念願のカウボーイになるべく、ファームへ旅立ったのである。
(写真)定点観測。思い出した時に同じ橋から川を撮影した。左上から順に3月、4月、5月、7月。5月5日の時点で雪は全て溶け、中州が現れた。もっと撮ったつもりだったが意外と少なかった。