誰にだって失敗はある。果たしてその取返しの機会は、どこにあるのだろうか。
小学六年生の時に、悔し涙を流した授業がある。それは日本の白地図に都道府県名を記す、という内容だった。私は四分の一しか書けなかった。各生徒が順々に、県名を答えていったが、私の番がくる頃にはすでに半分ほど言われていた。私は答えられず、ただ冷ややかな視線を感じた。
帰り際に先生から、白地図を十枚ほど手渡された。文字を書くのもよし、色を付けるのもよし、と。県名をすらすらと言えるようになったのは、このおかげだ。それから私は多くの人から「白地図」をもらってきた。時には色を塗り間違え、破ってしまった元「白地図」は、今や自分の中に積み重なる。
駅の一角に、彩られた地図とそっと並んで、白地図が置いてあっても良いのかもしれない。多めにとって、誰かに手渡すのも良いだろう。