早起き

 10月初旬、4時半起きの生活に別れを告げた。ルーミーは皆明るく、家はセントロ(中心街)に近く便利で、楽しかった。しかし、毎日の通学が大変だったのだ。だから、引っ越しできることになり、嬉しくもあり寂しくもあった。近くの美味しいタコス屋さんとアイス屋さんともお別れをしてきた。

 この家で、忘れられない出来事がある。2日ほど電気が止まったことがあった。つかないとわかっていても、いつも通りスイッチを押してしまう。暗くなると、寝るしかない。ようやく電気が使えるようになったとき、喜びをかみしめた。いまこの時代、当たり前に電気が使えるという幸せを、身にしみて感じた。

 今は、大学まで歩いて15分。大学院に通うキューバ人姉妹と住んでいる。キューバの話をよく聞くのだが、とにかく興味深い。メキシコのスペイン語とは違い、叫ぶようにたくさん話す。携帯があまり普及していないので、キューバ人はいつでもどこでも誰かと話しているとのこと。今の生活も、発見が多くて楽しい。

 先週の日曜、夏時間が終わった。日本との時差は15時間になった。4月にまた夏時間に変わる。変化は意外と大きかった。新しい家は3階にあるため、見晴らしが良い。家を出る時間にいつも見えていた夜景が、朝日差し込む爽やかな眺めに変わった。標高が高いせいか、その醸し出す雰囲気は美しい。歩いて大学に向かう途中、目覚めはじめる草木が輝いて見えた。まさに気持ちの良い朝。日中はまだサングラスが必要なほど照り付けるため尚更だ。思えば日本の大学生活では、6時半に外に出るなんてことはなかった。引っ越ししてから訪れた冬時間が、早起きを得した気分にさせてくれた。このことわざ、スペイン語では「Dios(神)が助けてくれる」と表現する。三文よりも、さらに徳かも。【大沼歩実】

▲どちらも朝6時半頃に撮った写真。右手には、国立公園にもなっている大きな渓谷がある。