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対話と決別(二期・大野友暉)

 「気楽でいいナァ、こいつらは。用事に追われることもなさそうで。」
 昼下がりの常磐線、日暮里駅まであと数分といったところ。無邪気にはしゃぐ中学生を見た彼が、僕にしか聞こえない距離で、そう呟いた。
 なんだ、苦労人面しやがって。自分だけが大変だとでも言いたいのか。被害者思考が見え透くようで、腹が立つ。今まで歩んできた道を、選んだのは自分でしょ。その人生の地図を広げて、これからも歩けることを楽しもうよ。そんな大切なことを忘れる奴が、最も身近にいたなんて。
 駅到着のアナウンスが響いた。僕は山手線へ乗り換えるため、歩き出す。
 「自分のための人生と思えば、君も気楽になれると思う。」
 そう言い残してドアを降りた。ガラス越しに見える僕の影は、きょとんとした顔で、違う車線へ流れていった。