死者の日①

 よく見かける伝統的切り絵、パペル・ピカドが橙・黒・紫になる。ハロウィーンだからではない。ここメキシコでは、それよりも大きなイベントがある。死者の日だ。11月1日から始まり、特に11月2日は祝日となっている。記憶に新しい2017年公開の映画リメンバー・ミーで、その名はより知られるようになった。ふと思い立ってメキシコへの出発前日に観て、賑やかな雰囲気に一気に引き込まれた。楽しみにしていたイベントの一つだ。

 死者の日(Día de Muertos)は、私たちが有限であること、死が生の一部であることを伝えてくれる。先住民は、死は「生があったしるし」で、喜ぶべきものとしていた。死者の国があり、魂が無事に辿り着けるように儀式を行っていた。スペイン人の到達で文化変容が起き、今日知られる形になった。

 1日には子供の、2日には大人の魂がやってくる。それらを迎えるために、お供えをしたり祭壇を飾りつけたりする。供え物はそれぞれ意味を持つ。死者の骨を表すパン・デ・ムエルトというパンや、死者を導くためのろうそくや乳香などである。また墓を訪れ、きれいにして花やろうそくで飾り付ける。地域によって違いこそあれ、共通するのは家族で集まることだ。

 前の週に、グアダラハラではdesfileというパレードが開かれていたので、観に行った。山車を披露したり踊ったりしながら、仮装をした有志団体が練り歩く。大きな通りが閉鎖され、両端にはたくさんの観客。多くの団体、観客も共に骸骨のメイクを顔に施している。メキシコではかつて死と向き合わなければいけないことが数多くあったため、今ではそれを笑い飛ばすかのように日常でも骸骨を取り入れている、と本に書いてあった。今はただ、皆がこの瞬間を楽しんでいた。骸骨といえば、死者の国の神だとされている先住民の像も、その姿をしている。時が流れ、形を変えながらも続いていくものがある。【大沼歩実】