まさかメキシコで、クレープが食べられるなんて思っていなかった。日本のクレープの店にやってきた。ピンクを基調とした店内、壁には可愛らしいキャラクターがたくさん描かれている。色を多く使うのはメキシコも同じだが、それとは別だ。原宿のイメージだろうか。撮影用の椅子も置いてあり、「インスタ映え」がここにはある。
日本のデザートとして、たい焼きの上にソフトクリームが乗ったものが有名らしい。友人が頼んだものをもらった。黒いソフトクリームは、黒ごま味ではなく、ジャンクな味。たい焼きも、日本のたい焼きとは程遠く、固い。どうやらメキシカン、いや、スペイン語でたい焼・メヒカーナのようだ。私が頼んだバナナのクレープは、懐かしさを感じる味だった。やはり王道の名は間違いない。
グアダラハラで、「日本」に触れる機会は多い。大学で日本語を教えているのは生まれも育ちもメキシコの日本人。学生に向かって「こら!」と怒る。寿司が市民権を得ているのには驚いた。大学のカフェはもちろん、どこに行っても必ずSUSHIと書かれた日本食のお店を見かける。しかし、生魚ではなく、カリフォルニアロールの類だ。甘いものまである。かなり味が濃いラーメン専門店は、週末には行列ができるほど繁盛している。
日本人の知らない所にも広がる日本。誰かがそこでの「日本」に触れ、イメージがつくられていく。自由に染まってはいるかもしれないが、それは彼らにとっての「Japón」の形なのだ。どこまでも広がっていくことのできる文化、その力の大きさを改めて感じる。【大沼歩実】