季節

 「メキシコの春、何か見つけた?」という友達の質問に、今は春だということを思い出した。2月下旬から、日中30度を越えるようになった。朝晩は10度前後まで下がるから、暑さが嬉しい。晴れ渡る空が清々しくて、毎日心も晴れる。冬は今よりも少し気温が低いくらいで、特に変わりはなかった。寒い中布団と戦う必要がなく、穏やかな冬だった。メキシコは、暖かくて過ごしやすい。

 今はたくさん花が咲いているのが「春らしい」ところかもしれない。見慣れない花がたくさんあって、楽しい。よく見かける大きな木ハカランダjacarandáは、日本でいう桜のようなものだろうか。花びらが散って、まわりに紫色の絨毯が広がる。赤やオレンジ、ピンクと明るい色の花が多い。

 花が咲いているとはいえ、もう木々は茂っていて落葉まで見る。とにかく暑い。もう夏だねと言うと決まって春だよと返される。メキシコ人の季節観では、暑いのが春、雨が降りだんだん涼しくなっていくのが夏らしい。確かに、去年到着した8月頃には雨がよく降っていた。また寒いのが秋、より寒いのが冬らしい。旬の果物や花によっても季節を感じるそうだ。そういえば冬は市場でマンゴーを全く見かけなかったが、最近売られ始めた。いつの間にか季節が変わっていた気がするが、言われてみれば納得だった。はっきりとした四季のある日本とは異なる1年が流れている。そして、ここで生きる人だからわかる変化がある。

 季節とは「四季の、そのおりおり」。世界には異なる気候があり、また季節は移り変わる。しかしそれぞれの「移り変わり」は、変化を知っていなければわからない。一年を通した生活の中にあり、その地で暮らしているからこそ楽しめる。旅行だけでは気付けなかったメキシコに、また出会えた。