ルチャリブレlucha libreを観に行った。いわゆるメキシコのプロレスだ。メキシコシティが聖地とされているが、グアダラハラでもArena Coliseoというアリーナで毎週日曜と火曜に行われている。基本は1ラウンドに3人対3人で、数ラウンド行われた。正義と悪が戦うということで、必ず正義が勝つようになっている。見せ場がいくつもあり、エンターテインメントとしての戦いを見た。ピンチもあるが最後には正義側が勝ち、大盛況の中終わった。
プロレスというものを、初めて観た。ある程度つくられているとはいえ、凄まじい戦いがあった。リングに打ち付けられるときの音が鈍い。1ラウンドが団体戦のようなものだから、数人がかりで蹴ったり叩いたりすることもできる。一撃を見舞われリングの外ににはじかれたあと、息を整えている姿が、リアルで痛ましい。何度も目をつぶってしまった。
会場は、groseríaという「品のない言葉」が飛び交いブーイングで盛り上がる。大人から小学生くらいの子供まで、中指を立てて熱狂していた。ブーイング用の笛も売っていて、あちこちで鳴る。日々の鬱憤を晴らす場としても機能しているらしい。ルチャドール(スペイン語でレスラーの意)がリングから退場するときは、子供達が集まりサインや写真を求める。小さな男の子が、あるルチャドールと同じマスクをかぶって一緒に写真を撮っていて、微笑ましかった。マスクを被るのはメキシコならでは。キャラクターとなり、知らない者、つまり征服者と戦って勝つという図式になっているそうだ。「克服」は、文化に根付く国民性なのだ。マスクやルチャドールの役割、全てを派手に行えるアリーナまでもが人々を魅了する。私が知らなかった、メキシコが愛するルチャリブレがあった。
会場を出ると、人が集まっている。関係者出口の近くで出待ちをしていた。ここでも写真を撮ったりサインを書いたりしてもらえる。一番怖い顔だと思っていた悪のルチャドールが、私達に気付いて「ありがとう」と日本語で言って握手をしてくれた。来週も出るからぜひ来てね、とも言ってくれた。白いカラコンをつけた恐ろしい形相とは正反対の、優しい男の人だった。つい先程、リング上で激しく戦っていたルチャドールと交流できた。ここでも自由なメキシコだ。「メキシコのルチャ・リブレ」のおもしろさに触れた。