メキシコ料理はおいしい。中でもタコスとコーラの組み合わせは最高だ。ただ、カロリーが高いことが難点である。メキシコ料理にトウモロコシの粉masaは欠かせないけれど、形成するためにラードが使われている。それをさらに揚げてあるものもあり、油の存在が強い。代表的なメキシコ料理ばかり食べているから、最近全く野菜を食べていない。大根の煮物が恋しい。
食品のパッケージには、わかりやすいカロリー表示が義務付けられている。嫌でも目に入るから、初めてカロリーというものを気にするようになった。公園には、遊具のほかに体を鍛えるための器具がずらりと並ぶ。毎週日曜は各地の大通りが、サイクリングやランニングをする人のために開かれる。それでも、3人に1人は肥満という実情だ。
それ以上に「表示のない」食事が多い。あまりに手軽な外食の舞台である屋台やレストランでは、カロリーを教えてくれない。メーカーのトルティージャの袋にはカロリー表示があるけれど、それよりも広く流通している手作り店のものにはない。友達によると、メキシコ人は生後6か月頃からタコスを食べ始め、歯のないおじいさんもまだ食べ続けているという。容易には変えられない生活スタイルそのものが、根源なのかもしれない。
私のお気に入りのひとつ、ハマイカjamaicaという真っ赤のハイビスカスの手作りジュース(なぜかジャマイカという)。コーラと同じくらい定番の飲み物である。ほかには、オルチャータhorchataやタマリンドtamarindoが代表的な味だ。砂糖がたっぷり入っていて甘いのに、これらをアグアagua(水)と呼ぶ。水で作ったジュースだから、水なのだ。メキシコではタピオカではなく、日常的にこのアグアを片手に歩く。水だから、カロリーなんて気にならない。 【大沼歩実】