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眠る街(四期・伊藤早紀)

 

 家とマンションばかりが建ち並ぶベッドタウンに住んでいる。多くの人が朝から出かけ、夜まで帰ってこない。目ぼしい店もなく、街全体が静かでつまらないのだ。早くこの街を出て一人暮らしをしたい。

 

 

 しかし家と駅を往復する毎日に、ポケモンを捕まえる使命が加わった。ポケモンGOという街にいる架空のポケモンを探すゲームを始めたのだ。

 

 

 ポケモンGOの地図には目印も、細い道と太い道の違いもほとんどない。帰り道に夢中でポケモンを探していると、道に迷ってしまった。

 

 

 真っ暗な細い道、閉店した中華屋、誰もいない公園。スマートフォンの画面ではなく前を見ると、そこには何もないつまらない街ではなく、今日を生きた人が明日のために眠る神秘的な街があった。ポケモン探しは、いつの間にか秘境探しになっていった。

 

 

 この街はつまらない、と決めつけていたが、ベッドタウンには人と秘境がたくさん眠っている。人はそのままに、秘境を1つずつ起こしていく楽しみができた。

 

 

 私は秘境の住民だ。