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私だけの帰り道(四期・越村悠梨)

 アルバイトの面接が終わり、夕方の街を一人で歩く。歩かないで電車に乗れば早く家に着くことができるのに。

 

 

 この日を境に、一人で長い時間歩くことに抵抗しなくなった。実にさみしいものだ。楽しかったことも悲しかったことも、自分の秘密にして心にとどめてしまうのだ。歩いていると自分にその日あった、よくなかった言動を夜の風が共に流してくれた気がした。それでも片隅にはよくなかった言動が残る。誰にも介入されないことをいいことに、新しい自分が見つけられたと勘違いする。この感覚に心奪われてしまったのだ。

 

 

 自宅に着くと、出発する前の自分が戻ってくる。しかし歩き出す前とは少し違う。それは明日の私へのエールと活力が、自分の中に含まれていたからだった。歩いていただけだった時間が、私にとって偉大な力へと変化していたのだった。変化させてくれた正体は私が歩いた軌跡である、秘境だったのかもしれない。