いつもと同じ道を歩いて駅に向かう。一人暮らしを始め、土地勘がない頃に目印としていた看板が見える。左に曲がる合図だ。家から駅までの間で見ることができるのは一軒家とアパートが並ぶ住宅街である。電車に乗り毎回違う駅で降りてカフェを探す。これが私の休日の楽しみだ。
ある日、ふと思い立ちいつもと違う道を曲がった。住宅しかないと思っていた道路沿いには、見たことのないカフェがあった。ひっとりとたたずむその店は、私にとって足を踏み入れたことのない「秘境」だった。
秘境と呼ばれる場所は、交通の便が良くなくたどり着くまでに時間がかかるところが多い。そのような場所で絶景に巡り合うことで秘境への旅がより楽しいものになるのだろう。しかし、「秘境」は身近にもあるのだ。日常生活と少し違うことをしてみる。ただそれだけで普段の景色が見たことのない絶景に変わるかもしれない。
いつもと違う道を歩く。また新しい秘境を見つける旅に出るのだ。