データに組み込まれたリズムと多彩な音色。3段のキーボードを両手両足で操る。一台でオーケストラを表現できるエレクトーンは私のお気に入りの楽器だ。
15年弾き続けるには理由がある。それは毎年12月にある生ドラムとの共演である。「秘境」が待っているのだ。
「秘境」への道のりは2か月前から始まる。楽譜という地図が手渡され、とにかく進み続ける。足が思うように動かなかったり、何回もつまずいて先に進めない。そして、繰り返し最初から最後までの道のりを往復しなければ辿り着かないのだ。
本番当日、足は震え、手には汗をかく。そのような状況で創り出すサウンドはどこか突き抜けるものがある。横から聞こえるドラムの振動と、スピーカーを通して聞こえる私の音。これが重なったとき、私の「秘響」ができあがる。
私は「秘境」に向かって進むのではなく、「秘響」を求めている。これからも「秘響」を探す旅は続いていくだろう。