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身近な秘境(三期・斎藤小瑚)

 

 「秘境」といえば必ず異国の地を思い浮かべた。

 

 

 飛行機や船を乗り継いで着いた先では、流れてる空気も、飛び交う言語も、行き交う人の肌や目の色も何もかも違う。海外旅行に行く度に「今度はどんな異世界が広がっているのだろう」と期待に胸を膨らませる。海外旅行に行くことが、非日常を味わう唯一のチャンスだと思っていた。

 

 

 しかし、それはただの錯覚だった。錯覚であると気がついた場所は、私の住む横浜であった。横浜はマンションや商業施設が立ち並び、自然といえば人工的に整備された臨海公園や庭園くらいだと思っていた。しかし、私の想像していた横浜は限られた場所だった。滝や渓谷、200mを越す山もある。私のすぐそばに今まで未開拓な地が広がっていた。

 

 

 秘境は遠く離れた場所にあるとは限らない。異質なものに触れようと意識があれば、自国でも、住宅地の中でも、地元でも、秘境になり得るのかもしれない。