あの日のことは、忘れない。
仲が良かった兄は、2019年3月、消えた。
正確に言えば、わたしのなかで消した。
父に翻弄されていた兄に八つ当たりをされ、私は、黙ることしかできなかったからだ。
自分の意志で決めてきた私という存在をすべて否定された気がしたのだ。
それから半年が経ち、ある人に出会った。Love deep Kapoorという人物だ。
名前のように彼は、深い愛で満ち溢れている。
いつだって家族を大切にする彼を見ていた。
そんな彼の愛に触れていくうちに、気づかされた。
私は、自己を愛しすぎていたのかもしれない。
自分以外の家族、友人といった誰かを愛することを知らなかったのだ。
今、兄を消した日から、1年半が経った。
愛するということを知り、兄の抱えている苦しみがようやく理解できた。
恐れていては、何も進めない。
閉ざした口を開き、言葉で伝えなければ、兄は生き返らない。
誰かを愛することは、難しい。
愛の遠回り、それでもいいのかもしれない。
一歩進めたような、そんな気がした。