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ペーパードライバーの言い訳 (四期・伊藤早紀)

 首都高をはじめて運転した時の衝撃は忘れられない。

 「え?え?!いま?いま?」半ば叫びながら同乗者に確認し、なんとか合流。さて一息、という訳にもいかず、待っていたのは延々と続く急カーブ。どのくらいハンドルを切れば良いのかさえ分からないのに、スピードを落としてもいけない。恐怖から、汗が止まらない。東京都よ、なぜこんな造りにしてしまった?

 その答えを知ったのは、電車から首都高が見えた時だった。首都高の真下にあったのは、土手。どうやら土地を買う必要がないという理由から、首都高の一部は川や幹線道路の上であることを前提に建設されたらしい。最速ルートにもかかわらず川の流れに左右され、遠回りをしていると思うと可笑しかった。

 だが、これは首都高に限った話ではないのかもしれない。獨協大学前駅から大学のまっすぐに延びる道も、信号を渡り、階段を上り、学生センターの前を曲がって、はじめて学校に着く。近道に見えてもどこかで遠回りをしなければ、目的地に着くことはないのだ。

 首都高がトラウマになったわたしは、今日も下道で東京を走る。この世には遠回りしか存在しない、そう言い聞かせながら。