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暗闇を進む (四期・越村悠梨)

 駅からホストファミリー宅まで、真っ直ぐ向かうはずの通学路を右に曲がった。


 期待と不安を胸に、大学3年次の夏に初めてアメリカに渡った。それは4週間の短期留学を経験するためだ。ガイドブックを片手に旅程を立てた日々と裏腹に、出発直前には空港の保安検査場でひとり涙を流した。入り混じった感情は言葉に表せなかった。

 

 約3週間経った日のことだった。短い留学生活の終わりを迎え、いつもの帰り道は工事現場へ姿を変えていた。日が暮れたせいか、見知らぬ道は初日の気持ちを思い出させた。


 帰る場所という安心はありながら、人影の少ない現実に押しつぶされる不安に駆られていた。坂を上り下り、蛇行した道を急ぐと、ようやくホストファミリーの家が現れた。自分が歩いた道は間違いなかったのだ。


 先の見えない状況で、歩き続ける人生だった気がする。そして、卒業後の進路も決められずにいる中で、向き合い続ける力を手にしていたのかもしれない。道のりは長く、時間がかかっても、ある一点の光を見るその時まで。一歩ずつ、私は今日も進む。