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「初恋」 (五期・西内明日香)

 初恋は実らないらしい。

 その二文字は、見ただけで甘酸っぱさを連れてくる言葉である。同時に切なさも思い出させる理由は、それがやはり実らなかったからかもしれない。

 私の初恋も遠い昔の記憶である。何人かと短い付き合いを繰り返して、高校生になった私は恋人ができた。そうしてその時初めて、何故これが初恋ではなかったのかと考えた。彼に会うまで私は遠回りをしていたのだ、とそれまでの時間を悔やんだのだ。

 しかし、あるバンドのボーカルは初恋を、初めての恋ではなく「終わらない最初の恋」と訳した。この歌詞を見た時、私の体に電撃が走った事は言うまでもない。

 そうなれば話は変わってくる。「初恋」とは必ずしも最初の恋ではない。最後の恋なのだ。本当の遠回りは私がこの事を知らなかった事かもしれない。

 例の彼とはその3年半後敢え無くお別れをし、今は新しい相手と暮らしている。これがいつか私の「初恋」になるのだろうか。