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アヒルのいきかた(五期・松本風見)

 某牧場で、「アヒルのお散歩」が開催されていた。アヒルたちは列を成し、飼育員が持つ餌を目指して、バタバタと必死に走っている。その中に、餌に興味がないのか、列から離れたところを歩いているアヒルがいた。

 その姿はまるで、遠回りをしているようだった。さらには、そのアヒルは遠くにある池に飛び込み、泳ぎ始めた。「餌を食べれない可哀想なアヒルだな」そう思った瞬間だった。

 飼育員は、池に餌を大量に投げたのだ。それは、「散歩」を終えたアヒルたちを集めるためだった。まんまと池を目掛けて一斉に向かってくるヤツらを横目に、あのアヒルはいち早く餌にありついていた。

アヒルは、最終的に池で餌がもらえることを知っていたのだ。急がずに、最短距離を通って池に向かっていたのだ。

 やられた。そのアヒルをもう一度見る。「オレの目標もやり方も、オレだけが分かっているんだぜ。」そう、言われているような気がした。