終電を逃した。しかも知らない街で、人生で初めて。
はじめての海外旅行、「エスニック」な国、タイ。羽田空港から朝一版のLCCに乗り空港に到着した頃には夕方で、友人に勧められたニューハーフショーを観にいった。22時頃公演が終わり、キラキラした気分でキャバレーを後にしたが、それは一瞬しかもたなかった。もうとっくに最終のモノレールは行ってしまっていたのだ。この地に降り立って6時間。右も左も言葉さえも分からない街で、私は終電を逃した。
しかたなく歩いて帰ることにした。Googleマップによるとホテルまではモノレールで40分、徒歩で2時間らしい。中心街から外れた夜の街は煤色で、車の往来が激しく、酔っ払いと路上生活者とバイクタクシーであふれていた。観光客は私一人で、真っ赤なゾウ柄のパンツは明らかに浮いていた。
私の思い描いていたカラフルで活気あふれる「エスニック」な国、タイ。もしかしたらそんなものはこの世のどこにもなかったのかもしれない。目の前に広がるのは、ただのタイランドだった。