小学生の私が密かにみていた夢は「タイムトラベラー」だった。
学校から家まで歩いて50分もかかるため、一瞬にして未来に移動できればいいのに思っていた。当然、瞬間移動ができるわけもなく、やむなく私と友人は最短ルートを見つけるため、道なき道にも足を踏み入れた。カラスウリが実る曲がりくねった草道や、薄暗く不気味な寺の横道も通った。
近道探しの途中では、色々な発見をした。近所で飼われていた孔雀を目撃したり、竹藪の奥に見つけたスペースを秘密基地にしたりした。帰り道は、近道をみつけて短くなったはずだったが、私たちはいつのまにか、1時間半近くかけて境なく探検するようになっていた。それでも、帰りの時間はいつもあっという間に感じた。遠回りよりも遠くて近い、不思議な旅だった。
近道も遠回りも、錯覚なのかもしれない。地図でも時計でもはかれない空間の錯覚は、私を距離も時間も境界も越えゆく「ツーリスト」にしてくれた気がする。