「あっち!」「?」「したよ!」
3歳の甥との会話は単純なようで難しい。幼子の言葉はいつもストレート。しかし脈絡がないのか、語数が足りないのか意味をとるのには婉曲すぎる。甥の最近のブームは散歩。その日の気分で近道をしたり、いつもより遠回りをしたり。どうやら私とまだ遊びたい時には遠回りを選んでいるらしい。なんともかわいらしい選択だ。
人はもう少し一緒にいたい時に遠回りを選ぶことがある。友人との帰り道や、恋人との他愛もない会話をあと少し、もう少しだけと時間を引き留めていく。言葉もそうだ。相手を傷つけないようにと、頭の中で生まれた言葉が遠回りしては相手の心に届いていく。ストレートな物言いをする人もいるが、心の中には相手に対する優しさや心配が隠れていたりもする。この言葉の遠回りが人と人との関係を引き留めることもある。
人はもう少し一緒にいたい時に遠回りを選ぶことがある。世の中かわいらしい遠回りばかりである。