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花が見たい(五期・松本風見)

 ごめんなさい、と心の中で呟く。謝った先にあるのは、ゴミ箱に放ったカビが生えた土。土の中には、芽が出なかった富良野のラベンダーが眠っている。

 

 私は旅行をすると、よく植物の種を買う。しかし、毎回決まって腐らせてしまう。普段、植物など育てもしないのに、なぜか買ってしまうのだ。

 

 旅行の目的地だったラベンダー畑は、今でも鮮明に思い出せる。ラベンダーは皆同じ高さなのか、切り揃えられたように、一面に敷き詰められていた。それは、風が吹けば波打つ川面のように、青紫色の花が揺れていた。

 

 目に映った感動を、自分の物にしたいと思い、種を手に取った。しかし、私は、毎朝水をやるとか、芽が出たら鉢に植え替えるとか、実際に育てることを考えていたわけではなかったのだろう。

 

 富良野からはるばる来たにも関わらず、私の家で捨てられた種を見ると、罪悪感と、ひどい気まずさを覚えずにはいられない。私は、持ち帰りたかっただけだったのだ。