カテゴリ:カナダ



2019/04/24
 10月31日、世界遺産の国立公園・バンフに到着した。ただ今回はハイキングをしに来たわけではない。カナダ生活最後の数カ月をここで過ごすことに決めたのだ。...
2018/12/29
 「戻って来ちゃったなあ」これが最初に抱いた感想だった。商品が所狭しと並べられた棚に両サイドから押し潰されそうな感覚を抱きながら僕はレジへと歩みを進めた。ここはスーパーだ。乗り換えも合わせると11時間を超える長旅に備えて水を買うところだ。バスの出発まで1時間もある。慌てることはない。...

2018/12/16
 3つの巨大なタンクが平原の中に肩を並べて立っている。まるで周りの風景に馴染んでいない。真っ黒にのぺーと塗られた色感がその異様さを更に際立たせていた。...
2018/12/10
 熱い。熱気がどんどん広がっていくのを感じる。瞬く間に体は汗でびっしょりになってしまった。さっきまでのひんやりとした空気はどこへやら。今となっては熱さで息が苦しいほどだ。...

2018/12/03
 これから行われるのはネイティブスウェットという儀式だ。海パンに着替えるために移動した控室から外を見てみると、木の枝でこしらえた骨組みに何重にも布団が掛けられたテントがある。その中で儀式は行われるようだ。  いざ外に出てみると寒い。時刻は17時。9月でも夕方になれば気温が一桁まで下がるのだから当然だ。...
2018/11/27
 車が小刻みに揺れるようになった。道路がアスファルトから砂利道に変わったのだ。更に奥へと進みにつれて道路のすぐそばまで広がる森はどんどん深くなる。何層にも重なるどんよりとした雲の隙間を見つけた小粒の雨だけが地上に降りることを許される。そんな天気も相まって辺りは重厚な雰囲気に包まれていた。牧場のマザーと僕を乗せた車はこのまま出口のない森に吸い込まれてしまいそうだった。  彼女は行き先を告げぬまま牧場を発ったが、どこに連れていかれているのか道中で発見した看板を見ずとも理解した。ここは"Reserve"の中だ。  Reserveとはカナダに住む先住民たちの居住地のことだ。カナダ全体で約3100か所あるという。彼らの人口は140万人程で、これはカナダの人口の4.3%に当たる。一口に先住民と言っても彼らは大きく分けて3つのグループに分けることができる。先住民の60%を占めるファーストネーション(北米インディアン)。彼らとヨーロッパ系の両方を祖先に持つメティス。そして北極圏に住むイヌイットだ。Reserveとは、この内のファーストネーションへ政府から与えられた土地のことを指す。彼らの約半数がこの居住地に住んでいるという。ここでは政府からの社会保障などの支援を受ける一方で、各Reserveは多少の自治権を持つ。カナダという国に属しながら、国や州といった枠組みとは異なる形で存在しているのだ。そのため外からReserveの中へ入ると、陸地に浮かぶ離れ小島のような独特な雰囲気を感じ取ることができる。  牧場に来てから3回目の日曜日、マザーがそんなReserveの一つに連れて行ってくれた。ネイティブスウェットという儀式に参加させてもらえるというのだ。(続く) 【染谷祐希】

2018/11/06
 それはエネルギーだった。最後の力を振り絞り、死という運命から逃れようとするエネルギーだ。その小さな体のどこにそんなパワーを秘めていたのか。  ただ、向こうが暴れるならこちらも全力で挑むしかない。相手のエネルギーが尽きるまで、僕は体全体を使って覆いかぶさるようにしがみついた。首の切られた鶏に。...
2018/10/22
 幸せだ。これ以上の幸せがあるだろうか。  ファームでの生活は9月7日から始まった。最寄りの町、Bonnyvilleから車で30分ほどの所に今回の牧場はある。  ファームのホストはTanyaという女性だ。カルガリーのホームステイ先のマザーも夫と離婚していたのだが、彼女もまたバツ1だ。そして口がとても悪いという共通点も併せ持つ。...

2018/10/21
 少しセンチメンタルな気分に襲われた。太陽が地平線に吸い込まれていくにつれ、カルガリーと僕との距離がどんどん離れていく。  9月6日、約6ヶ月過ごしたこの街を後にした。...
2018/10/02
 今日はカナダに来て初めて働いた場所を紹介する。  6月は月の始めに学校を卒業して、カウボーイになるべくファームを探すものの、見つからないまま、時間だけが過ぎていく日々だった。そろそろ事前に日本で準備してきたお金の底が見え始めた頃、僕は決めた。どこでもいいから働くことを。...

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